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暮らしのカタチ

2021.08.25

【ヘラルボニーと考えた】アートで彩る新時代のラグジュアリー

アートで世界を変えるヘラルボニー

福祉を起点に新たな文化を創ることを目指す福祉実験ユニットであるヘラルボニー。日本全国の障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2000点以上のアートデータを軸とする事業を展開しています。「福祉領域を、拡張しよう」「多者の視点で、思考しよう」「クリエイティブに、はみだそう」を自らの価値として掲げ、2018年に創業し、会社経営するのは双子の兄弟である松田崇弥さんと文登さん。お二人の兄である翔太さんは先天性の自閉症があります。文登さんは小学4年生の時に「障害者だって同じ人間なんだ」という作文を書いたそうです。障害という言葉に付着した欠落のイメージを変革するため、日本全国で数多くのプロジェクトが展開され注目を集めています。ご縁に恵まれ、ブルーモワメンバーが中心となりヘラルボニーと3つのコラボレーションがただいま進行中。そこに至る背景や込められた思いなど、対談形式でお届けします。

写真左:代表取締役副社長 松田文登さん、写真右:代表取締役社長 松田崇弥さん

松田崇弥さん:僕たちは一卵性の双子でして、4歳上の兄が先天性の重度知的障害に伴う自閉症がありました。当時、父は単身赴任だったため母は子育てに追われていたと思います。週末は岩手の福祉団体に参加するという日々が当たり前で、僕たちを可愛がってくださった大人の方々は福祉関係の方ばかり。いつか福祉をやりたい感覚が個人的にはありました。30歳までにはキャリアチェンジすることをぼんやり描いていました。小山薫堂さんが代表を務めるオレンジ・アンド・パートナーズで4年半ほど働いて、27歳の時に副業で「MUKU」というブランドを友人たちと立ち上げて、その流れから双子で2018年に「ヘラルボニー」を起業しました。ヘラルボニーという名は、兄が子どもの頃、自由帳に書いていた言葉を使っています。

枠組みから解き放たれたアートに感動

松田文登さん:岩手県の花巻市にある「るんびにい美術館」で、双子(崇弥)が障害のある作家たちの作品に触れ、とても感動したことがあって。支援や貢献という言葉や、障害という言葉が一切要らないレベルで、シンプルに作品が素晴らしかったと。ネットで検索すると、あまりにも「支援しましょう、応援しましょう」といった雰囲気が多く、そこに違和感や気持ち悪さもありました。どうやって変えていけるだろうと思った時に、10歳の頃に作文で「障害者だって同じ人間なんだ」というテーマで書いたことや、兄に対して偏見や差別を向けられていた昔の思い出が蘇りました。障害がある方にリスペクトをする場やモノが今までなかったのではなないか。リスペクトが生まれる世界を作っていくために僕たちにできることは何なのかと。

以前、障害福祉施設や就労支援施設で頑張って作ったものが安価に販売される光景を見て、これって誰が買うのだろうと感じました。親御さんや職員さんが「頑張ったね!」と応援の意味で購入しても、あまり続いていくお金じゃない。

そして自分たちで商品を作ると決断し、最高品質で最高のアートを届けることを目指しました。こうして作られたネクタイには、障害のある方と社会を“結ぶ”という意味を込めています。価格は2万円以上しますが、本当に良いものだと実感すれば購入する方々へ響く最高品質のプロダクトです。実際に手にして、身につけてもらうことで、障害という意識や概念を変えていくひとつのきっかけになりたいですね。

ヘラルボニーのアートライフブランド「HERALBONY」の2021年度キービジュアル

世界観を凝縮したHERALBONYブランドを構築

松田崇弥さん:創業して半年間は前職のプランニングの仕事をつなぎながら、ヘラルボニーを育てていく日々でした。文登が「どうしても、この飲料メーカーさんとご一緒したい!」と手紙を書き、ようやくご担当者の方に会っていただいたけど、打ち合わせスペースにも通してもらえなくて、5分で「無料なら考えますね」と言われたり。当時は商談の土俵に乗せてもらえないことがありました。そこから、自社ブランドであるHERALBONYの世界観を表現した方がいいと考えました。企業の方々からすれば、アートのライセンス事業といわれてもピンとこなかったと思います。僕たちは自分たちの世界観をビジュアルやプロダクトで表現していきました。

松田文登さん:渋谷にある100BANCH(ヒャクバンチ)というパナソニック創業100年を機に作られた場所に参加していました。「100年先を豊かにする未来」を創造することをコンセプトに、新しいことにチャレンジする若者たちの実験の場でした。そこでパナソニックさんがヘラルボニーと一緒にやるよ!と言ってくださったのが創業8ヶ月目の出来事。汐留浜離宮にあるPanasonic Laboratory Tokyoの6階・オフィスエリア「Ideation Lounge(通勤などのストレスをリセットし、独創のインスピレーションを得る場)」の壁面・クッションに使用されるアート作品を提供しました。

事例はこちらより


強さと美しさが際立つミッション「異彩を、放て。」 ヘラルボニーwebサイトより

福祉の外へ。障害の概念を変える「異彩を、放て。」

松田崇弥さん:この「異彩を、放て。」という言葉は、前職の先輩だったコピーライターさんが起業祝いに作ってくださいました。意識したことは、福祉業界にイノベーションを起こすのはもちろんだけど、まずは福祉業界の“外のイメージ”を変えていくところに全振りした方がいいと考えたことです。福祉は、厚生労働省が色々なことを定めていて、障害者手帳を始めさまざまな仕組みがあります。その福祉業界からイノベーションを起こしていくのではなく、障害がある人を「異彩」と定義して、社会や企業に対していろんな文脈で仕掛けていくことで、福祉業界の外での共感を確立していけるのではないかと。そこでうまくいけば、福祉業界にも逆輸入されるだろうと仮説を立てましたね。福祉にクリエティブの可能性を持ち込んだのは僕たちの強みだと思います。


アートと暮らしを融合するコラボレーション・プロジェクト

ブルーモワ:私たちは、業界のマジョリティではない動きをしています。ブルーモワも思い込みやボーダーに捕らわれず自由な発想で「異彩を放つ」活動をしていきたい。そう考える中で、ヘラルボニーさんにすごくシンパシーを感じ、目指す世界に共鳴しました。思想の押し付けではなくて、シンプルに商品やストーリーへの共感で評価を得たいという点も同じで、ヘラルボニーさんを参考にしたいことがたくさんありますね。以前、霞ヶ関に意見広告を出されていたのを拝見して、単なるアパレルブランドではなく誰も批判しない方法で、共感を得ていくスタイルに感動しました。意見広告もセンスがあって、キャッチーでわかりやすい。理想的な活動をされているので尊敬しています。いろんな活動を一緒にやりたい!という思いが溢れていましたが(笑)ファブリックをはじめ、暮らしと親和性の高いコラボレーションに集約していきました。

進行中の3つのプロジェクト

●ブリリア四谷三丁目モデルルームでの「ポップアップミュージアム」開催中
販売スペースの商談スペースにヘラルボニーの作家さんのアートを展示。ヘラルボニーのチームの方が現地に足を運び、提案くださった作家の中から、ブルーモワメンバーで最終的に1名を選定。四谷三丁目の販売が終わった後は、アートをブルーモワで保有する予定。

●22年(仮称)池袋三丁目計画で「オリジナルファブリック」(詳細検討中)を販売予定
豊島区はアート構想など積極的に行政も力を入れている。プロジェクトでは、アート作品をファブリックに展開し、モデルルームにて展示・販売予定。アートは敷居が高く、気軽に購入できないと思っている方に向けて、ラグやカーテン、クッションなどのファブリック展開からスタートすると手に取りやすく、アートへ関心を抱くきっかけづくりになると考えている。

●(仮称)ブリリアアートギャラリーで展示予定
詳細は近日公開予定。


ヘラルボニー:岩手のHERALBONY GALLERYでは1人の作家にフォーカスして展示しているので、ぜひいらしてください。現在146名のアーティストと契約しています。作品の原画をお預かりさせていただいて、データの著作権を含め当方で管理して運営する座組みです。テキスタイルに近いような繰り返しの表現がライセンスに選ばれやすい面があり、一方でライセンスではハードルが高い作品もあります。でも、原画には原画の良さがあって、アート実物の売買が生まれることは嬉しいことですね。

住環境そのものにヘラルボニーが当たり前のように存在していくこと、入り込んでいく世界を作っていくこと。いわば、マリメッコのような存在を目指しています。ヘラルボニーを通じて、大人が子どもに対して障害の伝え方が変わってきたり、また子どもが大人になった時の伝え方が変わることにつながっていく。教育な側面の価値を担っていく、そういった世界が実現したいですね。

これからは、ラグジュアリーの定義が変わっていくと思います。自分が本当に気持ちいいかどうかが基準になっていく。この新しいラグジュアリーの考え方をヘラルボニーが提案できると面白いなと思いますね。余談ですが、例えば洋服のテキスタイルが被っていたりするとむしろ喜んでくれて、そこから友人になったりするそうです。今日お互いが着ているジャケットも被りました。アートを裏地全体に使っていて、これはライセンス商品なので、ブランドさんにデータをお渡しして、製品作り・在庫管理まで行っていただいています。

住まいは自分らしさを表現する場所。人が集まる家が理想

松田文登さん:個人的にもアートが好きで、購入して自宅に飾っています。住まいは「自分は何が好きなのか、自分のアイデンティティーはなんなのか、自分の生き方そのものはなんなのか」を伝える場所。自分らしさが出る場所ですよね。

松田崇弥さん:2歳の娘がいて、すごく可愛いんですよね。娘が生まれて、価値観ってこんなに変わるんだなと驚くほどです。娘がいろんな人に囲まれて、大切にされていることに気づくと、世界の見え方が変わりました。横断歩道を歩いている人も、新入社員の子たちも、誰もが大切にされていると思うと、誰に対してもぞんざいに扱う行為は許されないと思いました。住まいは、自分にとっての納得感があって、いろんな人を招きたくなる場所ですかね。純粋に人を呼びたくなるような場所が理想です。

ブルーモワ:私たちは、アート・音楽・光・香りなどの「曖昧だけど、暮らしの心地よさを醸成する」ソフトの要素を「暮らしの素粒子」と定義し、これらに着目しています。普段住まいというハードを作っている私たちですが、これからはインテリアを広義に捉えた「暮らしの素粒子」、その先のライフスタイル提案をしていきたい。お客様のニーズは「ここに住んだらどんな暮らしができるか」ということ。その素粒子のひとつであるアートを切り口に、ヘラルボニーさんとコラボレーションすることで、ひとりひとりの暮らしに寄り添った、心地よさの醸成をしていきたいと思っています。

松田崇弥さん:障害のある方の教育は、個別最適化です。その個人に合わせてプログラムがあるのが特別支援教育。ブルーモワさんは、個別最適化を前提にした住まい作りを提案されているんだなと感じました。自分らしさの表現が、ネクストラグジュアリーにつながって、次の時代の新しいラグジュアリーだと思います。ちゃんとつながっている手触り感のあるラグジュアリーモデルを一緒に作っていく、提唱していきたいですね。

イノベーションが起きる可能性は、まだまだある

ブルーモワ:今後、一緒に子どもに向けたアートのワークショップをやってみたいですね。アートは親子のコミュニケーションツール。娘は、いわさきちひろさんが好きで、安曇野ちひろ美術館へ行きました。アーティストさんの人生に、親子で触れる体験になってすごく良かったんですよね。

松田崇弥さん:兄と娘が、アニメを観て一緒に盛り上がっていたことがありました。兄と娘との関わりが面白いんです。障害のある方とリアルに会う機会は稀有です。小さいころから当たり前に会うことや場を共有することが大切だと感じました。小学校の時、僕たちは兄と友人といつも一緒に遊んでいました。しかし中学校では兄をバカにする人がいて。小学校のメンバーは誰もそんなことをしなかった。一緒にいるだけで障害への概念が変わり、当たり前の環境下になると思います。また、できないことをできるようにしていくのではなく、すでにできていることや得意なことに社会側が金銭的文脈をつけていく考え方。できない前提を認め合った上で、できていることに目を向けていくきっかけを作っていきたいです。

松田文登さん:福祉施設には、自閉症の方がパニックになったときにクールダウンできる場所がある。そのような空間が住宅やビル・商業施設に反映されていくとリアルなイノベーションが起きると思いますね。日本だと障害のある人は約936万人と言われていて、日本全体の人口と比較するとニッチかもしれないけれど、確かなニーズがあると思います。

誰にとっても優しい世界になっていく。ヘラルボニーさんの活動は、そんなあたたかい未来を想像することができます。自分とは関係ないからと線を引くか、もしくは自分の意識を見つめて変容していくか。その岐路に立ったとき、どちらを選ぶ方が「優しい世界」につながるか、私たちは今そんなことの選択の連続かも知れません。あたたかい未来への変容が、次なる新しい豊さの基準になっていくと信じ、ブルーモワとヘラルボニーのコラボレーションは継続していきます。


株式会社ヘラルボニー / HERALBONY Co.,Ltd.

「異彩を、 放て。」をミッションに掲げ、 福祉を起点に新たな文化を創ることを目指す福祉実験ユニット。日本全国の障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを軸とする事業を展開する。障害のある作家が描くアート作品をプロダクト化するアートライフブランド「HERALBONY」、建設現場の仮囲いに障害のある作家が描くアート作品を転用する「全日本仮囲いアートミュージアム」など、福祉領域の拡張を見据えた社会実験に奔走中。世界を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

◉ ヘラルボニー(コーポレートサイト)
http://www.heralbony.jp
◉ HERALBONY(ブランドサイト)
http://www.heralbony.com

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