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私らしさを見つける「POSTERS × FURNITURES」
Exhibition with KIGI(キギ)

私らしさを見つける「POSTERS × FURNITURES」 Exhibition with KIGI(キギ)

2024年2月9日よりBAG-Brillia Art Gallery-においてポスターと家具の共演「POSTERS × FURNITURES」の企画展が始まります。BAGは東京建物が主催するアートギャラリーで、古美術店やギャラリーが数多く集う中央区京橋を拠点に活動をしています。さまざまなアーティストや地域とのつながりを生み出し、訪れる人の感性を満たすモノコトを発信する場であるBAGに、bloomoi(ブルーモワ)の共創パートナーであるKIGIをディレクターに迎えました。「POSTERS × FURNITURES」は、ポスターと家具を組み合わせた展示で、訪れる方に“私らしい暮らし”を考える余白を提供する仕掛けになっています。KIGIの植原亮輔さんと渡邉良重さんに、当企画展に込められた想いやプロセスについてのお話を伺いました。

ポスターを飾る生活が叶うPOSTERSとは

KIGI:
わたしたちが立ち上げたOUR FAVOURITE SHOP株式会社は、池尻大橋(2023年に白金より移転)にショップとギャラリーを併設するOFS.TOKYOというお店を運営していて、企画展を年に10本ほど企画、開催しています。そのうちのひとつが、2019年6月に開催した、ポスターを展示しながら販売する企画展のPOSTERSです。企画展はとても大好評で、わざわざ遠方から買いにきてくださる方もいたほど。グラフィックデザイナーが作り上げた名作のポスターを、部屋に飾り、暮らしの中に取り入れる提案は多くの方に受け入れられ、すごく求められていると実感しました。

その後、コロナ禍に入ってリモートワークが浸透し、誰もが家のことや暮らしを考え始めた頃。オンラインでポスターを販売するプロジェクトに取り掛かりました。ECサイトの構築や価格設定、出力サイズの設定や紙、額装などの仕組みについて何度も検討を重ねました。例えば価格について、ポスターは紙の印刷物で安価なイメージを持たれますが、実際の工程は異なります。版画のように精密に調整しており、プリンティングディレクターなど関わる方が多く、それぞれに手間がかかっています。その辺りは悩みましたね。時間をかけて設計し、企画展から2年半後。2022年2月にポスターを販売するウェブサイトPOSTERSをオープンしました。グラフィックデザイナーたちがPOSTERSのために作り上げた限定オリジナルポスターから、過去に制作したアーカイブポスターまで、貴重な作品の数々を販売しています。

−グラフィックデザイナーにとってポスターはどんな存在ですか

KIGI:
グラフィックデザイナーの仕事は広告やポスター、ブランディングなど多岐に渡ります。その中でもポスターを作る仕事はすごく減ってきました。グラフィックデザイナーの立場としては、やっぱりポスターを作りたい。ポスターは、見る人に対してスピードコミュニケーションの役割を持っており、デザイナーとして作っていないと勘が鈍ってしまう感覚があります。

グラフィックデザイナーは、これまでも数多くのポスターをつくってきましたし、積み重ねてきて、独自の表現方法を持っている方がたくさんいます。ポスターの目的は企業(広告主)の想いを一枚のビジュアルにする役割ですが、その目的だけに留まらず、作品そのものが素晴らしく、時代を作ってきたようなものも多い。だからこそポスターが消えていく今の時代がもったいないと感じるし、ポスターを少しでも世に残していきたい気持ちが強くありますね。POSTERSが、みなさんにとって身近だけれど憧れとなるものに育てていきたいと考えています。

*OFS.TOKYO
https://ofs.tokyo/
KIGIの植原亮輔と渡邉良重、bluestractの森谷健久 、アートディレクターの岡室健氏が東京・池尻大橋で運営するギャラリー&ショップ。

ポスターが暮らしを照らし、力を与えてくれる存在に

−POSTERSの企画展で購入したポスターを教えてください

KIGI植原さん:
自分の中で「上手いと感じる作品」と「好きと感じる作品」があって。好きだと感じるものには、自分自身の幼い頃の体験や感情が含まれているようで、10代の頃から好きだった葛西薫さんと仲條正義さんのポスターを購入しました。

KIGI渡邉さん:
永井一正さんと仲條正義さんの作品です。「いま、買っておかなきゃ」という気持ちで購入しました。「好き」と「欲しい」は少し違うニュアンスがあると思っていて。永井一正さんと仲條正義さんの作品は、手元にずっと持っておきたいと感じました。両作品ともお守りのようなもので、自分に力を与えてくれますね。

KIGI植原さん:
ポスターを眺めて暮らしていると、だんだん気持ちが乗り移って「自分のポスター」になってくる。リビングに大きく飾ってあることもあって、ポスターが自分の暮らしを照らす存在であり、共に暮らしているうちに、その時々で意味合いが変わってくる気がします。制作者である葛西さんが、ご自身の作品の中で好きな順位をつけるとしたら上位になるか分からないけれど、間違いなく僕にとっては大切なポスターです。

「POSTERS × FURNITURES」の楽しみ方

−今回、企画展を開催した経緯を教えてください

KIGI:
暮らしや住まいの空間を提供するbloomoiと共に創ることが大前提にあったので、ポスターと家具の組み合わせを表現することで、暮らしの提案につながると考えました。ポスターだけの展示はよくありますが、家具と組み合わせた展示によって新しい見方や気付きが生まれると思います。ACTUS(アクタス)で選ばせてもらった家具は、デザインがよく、素敵なものばかりでした。その後、選んだ家具とポスターをひとつずつ組み合わせていったら、すごくスムーズにセッティングができました。

私たちが企画展を企画する上で、訪れる方を楽しませる方法として“謎”を残すことが大事だと考えています。今回はポスターと家具の組み合わせごとに、ある仕掛けをしました。謎というのは“想像力を膨らませるきっかけ”のこと。鑑賞しながら考えを巡らせる時間は頭の体操にもなるし、友人と一緒に感想を述べ合うのも楽しい時間になります。作品から感じたことをゆっくりと味わう。そんな気軽な気持ちで企画展を楽しんでもらえたら嬉しいです。

−ポスターを家に飾るときに、まず何から始めればよいでしょうか

KIGI:
もしポスターのサイズに悩んだなら、まずは小さいものから始めてみてはいかがでしょうか。額装はせず、A3サイズのポスターを飾るところからやってみる。どんな場所に飾りたいか。どんな気分になるか。肩の力を抜いて、掃除のついでに飾る場所を変えてみるなど、自分らしさを自由に楽しむことを大切にしてみてください。

自分らしさを見つけていくプロセスにおいて、自分の感性が呼応するモノやコトに触れることはとても役立ちます。心地よいと感じるもの、好きなもの、力を与えてくれるもの、優しい記憶につながるもの。自分を満たすパーツを見つけることも喜びであり、心が豊かになっていきます。「POSTERS × FURNITURES」の企画展で、私らしい暮らしのパーツをぜひ見つけてください。

BAG -Brillia Art Gallery-
https://www.brillia-art.com/bag/
「POSTERS & FURNITURES」2024年2月9日(金)~3月31日(日)
104-0031東京都中央区京橋3丁目6-18東京建物京橋ビル
11:00~19:00 (休館日:月)月曜日が祝日の場合は開館、翌火曜日が休館 入館料は無料

KIGI
http://ki-gi.com/
植原亮輔と渡邉良重により設立。企業やブランドのアートディレクションのほか、プロダクトブランド「KIKOF」や、ほぼ日とのファッションブランド「CACUMA」などのデザインコンテンツを手掛ける。東京・池尻でギャラリー&ショップ「OFS.TOKYO」を運営するなど、ジャンルに拘らず自在な発想と表現力でクリエイションの新しいあり方を探し、活動している。2022年にアイウェア「TWO FACE」を含む新たなプロダクトレーベル「ASSEMBLEDISASSEMBLE」をスタート。代官山ヒルサイドフォーラム「all is graphics」展(2022)、宇都宮美術館「KIGI WORK&FREE」展(2017)、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレに「スタンディング酒 BAR・酔独楽」出品(2018)。東京ADC会員賞(2023,2019,2017)、東京ADCグランプリ(2015)、亀倉雄策賞(11th植原,19th渡邉)等受賞。