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「POSTERS × FURNITURES」talk event report with KIGI&ACTUS

「POSTERS × FURNITURES」talk event report with KIGI&ACTUS

2024年3月9日に東京建物が主催するBAG-Brillia Art Gallery-において「POSTERS × FURNITURES」企画展*のトークイベントが開催されました。本展はKIGIが企画を行い、ポスターと家具(ファニチャー)を組み合わせた展示です。ポスターは日本を代表するグラフィックデザイナーの作品が購入できるPOSTERSから選出。家具はACTUS(アクタス)が国内総代理店を務めるTECTA(テクタ)を中心に構成されました。トークイベントにはKIGI植原亮輔さんと渡邊良重さん、ACTUSブランドディレクター大重亨さん、モデレーター山田泰巨さんを迎えて、企画展の背景やデザインにまつわる様々な視点が語られました。その様子をお届けいたします。

*企画展は2024年3月末で終了しています

KIGIのインスピレーションで組み合わせたポスターとファニチャー

bloomoi(ブルーモワ)の共創パートナーであるKIGIをディレクターに迎えた本展は、訪れる方に“私らしい暮らし”を考えるきっかけを作り出す場となりました。会場となったBAGは2つのギャラリースペースがあり、一方ではドイツのTECTAを中心とした家具とポスターによる空間構成が生み出す相乗効果に焦点を当てた展示を行い、もう一方では「日本の名作ポスター大集合」と題して壁面一杯にPOSTERSから出力したポスター約200点を掲出。さらに展示を楽しんでもらう工夫として、作品を制作したグラフィックデザイナーのインタビュームービーを場内で上映し、展示ポスター作品をフレーム付きで購入できるサービスを行いました。満員御礼で開催されたトークイベントでは、企画展のビハインドストーリーやTECTAのデザイン哲学、住まいと暮らしを“自分”に引き寄せることの面白さや気楽さが語られました。

ACTUS大重さん:

今回の企画展のお話をもらって、KIGIさんとご一緒できることをとても嬉しく思いました。何か面白いことが起きるかも知れないとワクワクしましたね。家具については、KIGIのお二人に好きなものを自由に選んでいただきました。一般の方はあまり選ばないけれども、すごく意味のあるデザインの家具ばかりをお選びになるので驚きました。審美眼ですね。(トークイベントで)KIGIのお二人がお座りになっている椅子は、それぞれが選ばれたものですが、とても似合っています。KIGI渡邉さんが選ばれた椅子は、ミース・ファン・デル・ローエが1927年にデザインしたものです。こういった名作と呼ばれる家具は美術品として値段が下がることが無いし、むしろ価値が上がっています。「気に入った家具が見つかったら、その時に買っておかないと後悔する」と言われたりもしますが、今回、KIGIのお二人が「これがいい」と選んだもののほとんどがドイツにあるTECTAの家具でした。

KIGI渡邊さん:

あまり家具のことは詳しくなくて。企画展で家具を選ばせていただくということでACTUSを訪れたら、すごく素敵なものがたくさんあって、ひと目見た瞬間に「欲しい」と思いました。この椅子もそうです。後で大重さんに聞いたら、有名な家具だと教えてもらいました。

KIGI植原さん:

僕は、知識から家具を選ぶことをしたことがありません。今回の企画展にあたり、直感的にいいと思うもの、ワクワクするものを感覚的に選びました。唯一無二のようなものが好き。自邸の家具は基本的に自分で作ることが多いです。今回の展示ではちょっと珍しくて、平面で表現できそうなグラフィカルな家具を選んだように思います。そうやって選んだら、TECTAの家具が多かったようですね。見たことがないものがTECTAにはあって、でもデザインが変わりすぎていなくて、ちょうどいいバランス。シンプルでポイントが分かりやすい。

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私らしさを見つける「POSTERS × FURNITURES」Exhibition with KIGI(キギ)

バウハウスのデザイン哲学を継承するTECTA

TECTAは家具を通じてバウハウス*のデザイン哲学を現代に伝える稀有なブランドです。ドイツにある小さな家具工場ですが、現在もバウハウスのオリジナル家具とバウハウスをルーツに持つプロダクトを作り続けています。椅子、テーブル、アームチェアなバウハウスのオリジナルデザインの家具約20点を製造し、その全てにバウハウスのアーカイブであることを証明するOriginal Bauhaus Modelのステッカーが貼られ、正しい後継者として認められています。

*バウハウスとは
1919年にドイツのワイマールに設立された、美術と建築の総合教育を行う学校。工芸やデザイン、写真など幅広い教育カリキュラムで様々な人材を育て、その活動はわずか14年ながら、現在におけるまで建築やデザインに大きな影響を与えている。

ACTUS大重さん:

TECTAは僕が一番好きなブランドですね。バウハウスを継承したデザインやプロダクトが稀有です。TECTAが工場とオフィスを構えるのはドイツ中部にあるローウェンホルデという街で、周囲は美しい草原と林が広がっており、誰もこんなところに家具工場があるなんて思わないような場所です。オフィスと工場の中通路には、壁面いっぱいにデザイナー直筆のスケッチや書簡などの貴重な資料が飾ってあります。訪れるたびに額装が変わっていて、それは現在会長を務めるアクセル・ブロッホイザー氏がレイアウトしています。彼は人生をデザインにしか時間を使いたくないという方で、自宅もデザインのインスピレーションを刺激するものしか置いてないほど。とてもお茶目な一面もあります。自宅の敷地内にはツリーハウスがあったり、床がガラス貼りの瞑想の間があったり、とてもワクワクする場所ですね。

自分の心を掴まれるものから住まいを構成していく

KIGI植原さん:

家が狭いので、どんなポスターを選んだらいいですか?という質問をもらいます。大きなものや複雑なものより、小さくてシンプルなものから始めるといいかも知れません。あとは自分のインスピレーションにフィットする感覚で気軽に選んでもらったらいい。

KIGI渡邊さん:

私は何かを手に入れるときに「部屋が素敵になりそう」ではなく「ずっとこの先も持っていたいか」と自分に問いかけますね。私が持っているポスターは、自分に力を与えてくれるような、ちょっとお守り的な存在です。

ACTUS大重さん:

住まいを考えるときは、まず家を決めてから、そのあと家具を選んで、ちょっと家の中が寂しいからプラスアルファを選ぶといった順番が一般的ですよね。実はアクタスのお客様には最初に家具から決める方がいらっしゃいます。「このテーブルが似合う家をこれから探します」と。例えば、「このポスターを飾りたいから」と自分の心が掴まれたものから始めて、最後の最後に家を決めても良いのかもしれませんね。

本展は「ポスターと家具の共演」というコンセプトによって、bloomoiが目指す「私らしいHOME LIFEの創造的なつくり方」の具体的な提案につなげることができました。住まいや暮らしの在り方に正解はなく、自分の感覚や心地よさ、嬉しさを中心に選んでいけばいいし、そのプロセスを気軽に楽しんでほしいという願いがあります。自分に軸を立て、自分の感性を信じるシンプルさ。そんな軽やかな気分で、自分の好きな絵やポスターを飾ってみてはいかがでしょうか。

キギと創造株式会社
http://ki-gi.com/
植原亮輔と渡邉良重により発足。企業やブランドのアートディレクションのほか、プロダクトブランド「KIKOF」や、ほぼ日とのファッションブランド「CACUMA」などのデザインコンテンツを手掛ける。東京・池尻でギャラリー&ショップ「OFS.TOKYO」を運営するなど、ジャンルに拘らず自在な発想と表現力でクリエイションの新しいあり方を探し、活動している。2022年にアイウェア「TWO FACE」を含む新たなプロダクトレーベル「ASSEMBLEDISASSEMBLE」をスタート。代官山ヒルサイドフォーラム「all is graphics」展(2022)、宇都宮美術館「KIGI WORK&FREE」展(2017)、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレに「スタンディング酒 BAR・酔独楽」出品(2018)。東京ADC会員賞(2023,2019,2017)、東京ADCグランプリ(2015)、亀倉雄策賞(11th植原,19th渡邉)等受賞。

ACTUS
https://www.actus-interior.com/
1969年創業の株式会社アクタスは、日本の暮らしの質的向上を目指し、ヨーロッパを中心とした家具、テキスタイル、インテリア小物の輸入販売を事業の中心におくライフスタイルブランド。全国に35店舗の直営店を運営しています。本展の中心となる家具ブランドTECTAの日本総代理店でもあります。TECTAは、バウハウスの名作家具を復刻するなど、バウハウスのデザイン哲学を継承するブランドです。