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スペシャル

2022.01.28

# BloomHour 01 The fin. Yuto Uchino インタビュー

アーティストの自宅から特別ライブと日常風景をお届けする<BloomHour ー音楽と暮らしの彩りー>は、自宅での弾き語りライブや暮らしのインタビューを収録した音楽イベントです。withコロナが続く状況で、おうち時間のON/OFFがつけづらい今。アーティストの日常に触れ、暮らしを心地よくする最小単位と考える「暮らしの素粒子」をご紹介していきます。第一回目のアーティストは、The fin. のYuto Uchino。音楽を愛する人たちが集う街に拠点を置き、自宅にスタジオを構える日常に迫ります。



自宅のスタジオで楽曲制作をする暮らし

― 現在暮らしている住まいには、いつから住んでいますか

2019年11月から東京で暮らしています。それまではずっと海外ツアーに出ていたので、いろんな国を行ったり来たりしていて、ゆっくりと落ち着いて制作が出来ないと思って。ちゃんと東京に腰を据えて環境を作ろうと思って探していたら、たまたま(現在暮らしている)防音仕様のマンションを見つけました。新築で、ここに住むしかないと思いました。

この街には音楽家が多くて、街を歩くと通りから楽器の音色が聴こえてきます。夕暮れ時に、ピアノの音がポロポロと聴こえてくる。自分が育った地元(兵庫県宝塚)と似てて、街から夕飯を支度する匂いやピアノを練習してる音が混ざる感じ。引っ越した後、毎日のように街を探検しているうちに「どうやらこの街はいいぞ!」と思いました。好きですね、この街が。

人が好き、人が大事

― 海外では、どんな住まいで暮らしていましたか

それまでの暮らしはAirbnbを利用していました。ベスト1は、イギリスで住んでいた家ですね。大家さんと仲良くなって、途中からAirbnbを介さずに直接貸してもらえて、家賃もすごく安くしてくれました。俺が家で寛いでいる時に、何気なくパッと窓をみたら、外でウイスキーとテキーラを手に持っていて「飲もうぜ!」と笑顔で立ってるんですよ。イギリスを離れるのは、めちゃくちゃさみしかったです。今も仲良しで、つい2日前もメールで連絡していました。 人が大事ですね。俺は、人に囲まれていないとダメになっちゃうタイプかもしれないですね。ひとりの時間も必要ですけど、子どものころからグループでワイワイするのが好きで。外で遊ぶときはグループで遊んで、家では1人の時間が好きっていう、結構両極端な感じでしたね。

常にふたつのテーマを行き来することがコンセプト

― 映像で演奏している楽曲について教えてください

新しいアルバムは、常に1曲の中に2つのテーマがあって。そこを照らし合わせたり、行ったり来たりしながら、1曲ごとにちっちゃい宇宙があって、大きなユニバースが出来上がるみたいなテーマです。

「Sapphire」のインスピレーションは、小さい時に、車の中に乗って、窓を開けた時に感じた感情みたいなモノから始まっています。楽曲が進むにつれて、自分が大人になっていく。子どもの頃の自分から始まって、楽曲が終わる時には今の自分になっている。時間の経過とともに曲も経過していくようなテーマで作った曲です。

「Outer Ego」は、新作アルバムの表題曲です。「Outer Ego」は、当初「アウタースペース」とか「アウターリム」とか呼んでいたんだけど、バーっと宇宙が広がっていて、その広がっている宇宙のさらにその外側やその端っこみたいな意味合いです。初めて自分より年下の年代に向けて書いた曲です。自分が今、若い年代に対して伝えたいことって何かな?と考えた時に、歌詞が出てきた。結果、それが自分を元気づけてくれるみたいな感じになったんですけど。

「Outer Ego」っていう意味は、直訳すると“自我の外側”という意味。自分のイメージでは、自我っていうのが、だんだん中心に向かって塊になり、強くなっていくよりは、その自我がだんだん外側に膨らんでいって、拡張して、だんだん薄くなっていって、自我が無くなっていく、消失していくイメージで「Outer Ego」と名付けました。

アーティストをしていると、自我が強くなったりとか、自分が思っていることを表現したりするのはすごく大事なんですが、今年、自分も30歳になって自分の自我ばっかりに、こだわっているのも寂しいし。最終的には自我が広がっていって、みんなとひとつになるのが、結局PEACEなのかなっていう自分の考えがちょっとヒントになりましたね。

何かを作ることが子どもの頃から好き

― 最近、オリジナルのビールを作られたそうですね

東京神田にあるCRAFTROCK BREWINGとコラボレーションで、オリジナルのビールを作らせていただいて。昔、アメリカでライブツアーしたんですよね。アメリカにはクラフトビールがめちゃくちゃたくさんあって。その土地に行ったら、行くだけ新しいビールが飲めるみたいな感じなんですよ。それまであんまりビールが好きじゃなかったんですけど、アメリカでクラフトビールを飲んで、こんな美味しいんだ!と思って。クラフトビールもいろんな種類があって、ビールが好きになりました。

その数年後ぐらいに、イギリスに引っ越したんですよ。イギリスもクラフトビールがすごく盛んで。友達の友達が、クラフトビールで働いていてブルワリーに遊びに行かしてもらって。出来立てのクラフトビールを飲んだときに、めちゃくちゃ美味しくてこんなに美味しいのか!と。それからマネージャーといつかビールを作りたいよねと、ずっと話をしてて。行く末はね、地元ビールを作りたいですよね、宝塚ビール!作ることを小さい頃からずっとやってきて、自分で遊びを考えたり、プラモデルを作ったりとか、いろいろあったと思うんですけど、作るのが好きだったんですね。

CRAFTROCK BREWPUB and LIVE

何かを作る時間は、楽曲制作に還元されていく

― ものづくりをする時間は音楽にどんな影響を与えていますか

大人になって音楽を仕事にして、音楽を作り続けているんですが、音楽だけになってしまうと、どこか偏ってしまうというか。音楽を作りながら、料理を作ったりとか、ビール作ったりすると、自分がメインでやってる音楽作りにすべて還元されるんですよね。

例えば料理は、「こうやってやったから、うまくいったなあ」「こうやったら失敗したな」とかあるじゃないですか。「ビール作りのこの工程って、なんで必要なんやろうな」と、それを音楽で考えた時に、この方程式みたいな部分って、音楽にも当てはまったりして。それがアイディアになって、いい刺激として、自分の中にありますよね。だから楽曲を制作している時の方が、自分で料理しますね。

自然の音を聴いて、自分の耳をリセットする

制作時は、ずっとスピーカーの音を聴いています。そのスピーカーから出てくる音は音楽用に処理されている音で、普通の音じゃないんですよ。料理をすると、鍋で水がグツグツ湧いている音とか、水が跳ねるバシャバシャした音とか、自然の音が聴けるじゃないですか。それで耳がリセットされる。この時間がすごく大事なんです。

実家で暮らしている時は、そのリセットが犬の散歩だったんですよ。自然の音を聴いて、耳をリセットする。レンジ(広がり)が大事なので、楽曲制作に集中しすぎると見えなくなってくる。一回こっち側に戻して、俯瞰で見る。プロデューサーによっては、作業をしながらずっとテレビつけてる方もいるらしくて。それで俯瞰の視点を保っているんですよね。初心者でよくあるのが、夜中に楽曲を作って、その時は最高だと思うんだけど、次の日に聴いたら全然よくなかったみたいな(笑)。人間の仕組みだと思うんですけど、どっかでスイッチを切ってあげると、俯瞰になれる。

俺は、感覚を論理化する過程が大事なんです。人間って何かを感じて、そうやなあと思っても、感じたままで放ったらかしておくことが多いですよね。だって別に関係ないしね、自分がどう感じていようが。でもアーティストがそこをほったらかしにせず、敏感に感じて、自分なりの答えを考えて、発信していかない限りは、人って良くなっていかないと思うんですよね。

冬になるとハリーポッターを読み返したくなる

― 最近読んだ本や観たドラマを教えてください

ちょうど今、ハリーポッターを読んでましたね。ファンタジーやS Fが好きなんですよね。冬になるとハリーポッター読みたくなります。初めて観た映画は「スターウォーズ」で、超王道ですし。今読んでいる小説は、グレッグ・イーガン「祈りの海」です。彼は、すごく有名なS F小説の作家なんです。未来でAIや技術が進歩する中で、人がどうするかみたいな話がめちゃくちゃおもしろい。今だって、特に俺たちね、だんだんネット社会になってきてね、何がリアルなのかわからない時代になってきているし。あとはNetflix で「バイキング」を観てます。古代の北欧を舞台にした物語で、宗教や死生観などがおもしろいですね。

起きたら、まず機材のスイッチを入れる

― 毎日の暮らしについて、ルーティンはありますか

まず起きたらご飯を食べる。早くても朝10時半とか、遅くて夕方4時とか。制作しているときは終わらないんで。俺は割とクタクタになるまで寝ないタイプなんですよ。だから朝9時まで制作してる時もある。朝ご飯食べたら、すぐスタジオに座っていますね、そして機材の電源を入れる。でも制作をやんないときは、全然やんないですよ。ブロックでやっているんで、この3ヶ月はめちゃくちゃ制作するけど、この3ヶ月は遊んでしかないなって感じで。

3ヶ月ぐらい遊ぶと、自然に家に戻っていって、自然に制作を始めますね。俺のジンクスは、夏の終わりと冬は、いい曲ができるみたいな。そのジンクスを自分で作っていたんですけど、全然そんなことなかった(笑)。 昔は作っている曲の数も少なかったから、たまたま自分が好きな曲はその季節に固まっていただけで。増えてくると春でも作っているなと思って(笑)。

集中できる環境は、安定した快適さと刺激の少なさ

実家が木造で、冬がめっちゃ寒かったんですよ。震え上がるぐらいで、家の中で半纏を着る感じで。それがイギリスへ引っ越した時に、イギリスの冬はすごく寒い分、室内の暖房設備がしっかりしているんですよ。だからイギリス人は、みんな家の中では半袖。そんな経験をしてから 冬に寒さで苦しまなくていいんだ(笑)って。今は、常に半袖で入れるみたいな状態を家で作っていて、オイルヒーターをつけとけば、冬が来たことに気づかないほど快適です。

これって、楽曲制作においてはすごく大事で。実家のときは寒すぎて、足が痛くなって、制作を中断して温まるためにお風呂に入っていましたから。あと光もそうです。吸音する板を窓際に置いていて、すると日中太陽の光がほとんど入ってこないんです。さらに集中できるようになりました。昼間より夜の方が集中できますね。

脳が暇な状態を作ることで、アイデアが生まれる

最近は、歩いていますね。一日1万歩が目標。あえてひとつ前の駅で降りたりして。俺が、いつも考えているのは“脳の処理をしなくていい環境”になるべく身を置くようにしています。例えば家にいたら、すぐスマホを触っちゃうじゃないですか。情報過多になってします。シャワーを浴びている時は、シャワーを浴びるしかできないじゃないですか。体を洗うのも、自動でできるじゃないですか。何も考えてない。そしたらようやく脳が暇になって、すごく考え出すんですよね。ある研究があって、人は、脳を暇な状態にすることでアイディアが生まれると。だから歩くと暇じゃないですか。スマホも見ないし、景色が綺麗だなと思うぐらいで。気がついた時には、いろんなことを考えて、色んなアイディアが思い浮かんで、それをストックできる時間がいいですね。

スピーカーで音楽を聴くことが好きな理由

― 音楽を自宅で楽しむときのアドバイスはありますか

クリエイティブな話をすると、音楽は基本的にスピーカーで聴くように作られています。作られた環境に近いもので聴くのがいちばんいい。自分にとっては、実家で聴いたスピーカーの音がスタンダードなんですよ。原体験ですね。スピーカーから音を出すと、左の音と右の音が混ざるんですよね。両方の耳で聞くっていうその部屋の音や環境が全部混ざってひとつの音楽になる感じなんです。音楽はナチュラルなものっていうか。スピーカーで聴くとね、うまい感じに混ざって。部屋の場所によっても聴こえる音が変わるし。自分のスタジオで聴くのも良いし、キッチンで料理しながら聴くのも良いし。実は人って、スピーカーの音を聴いていると思っているんですけど、半分以上は“部屋から返ってきている音”を聴いています。そうやって、その空間だけの音を聴くことは、とてもスペシャルだと思っているので、俺はスピーカーで聴くのがおすすめですね。

暮らしの素粒子は、音楽。コロナ禍で気づいたこと

自分にとっては、音楽ですね。新作を作った時にずっと考えていたことがあって。日本は緊急事態宣言が出て、海外ではロックダウンが起きたとき。初めてだったんですよ、こんなにライブをしない経験が。バンドを始めたのが16歳ぐらいだったんですけど、そこからライブを月に一度はしていたので。そしたら、自分が一体何をしているのか、よくわかんなくなってきた。音楽を作ってレコーディングはしているけど、これまでは道筋が見えているから作業しやすかったんです。音楽を作って、発表して、ツアーをまわって、聴いてもらって。そこでひと区切りがある。

でも、今はストリーミングで音楽を聴けますし「聴きました!」と言ってもらえない限りはリアクションって意外と無いんです。手応えが無い。音楽を作るのも煮詰まったりして、結構しんどくなっていました。でも、そんなときでも、俺はずっと音楽聴いていたんですよ。音楽を仕事にして、音楽で悩んだりしているのに、まだ音楽を聴いているんだと。「あれ、俺はほんまに音楽好きなんやな」と思って。再確認というか、自分はやっぱり音楽が好きだなと思いましたね。

リラックスできるストレスがない暮らし

― ご自身にとって、いい暮らしとは何でしょうか

いい暮らしとは、いかにストレスがないか?ですね。昔、水槽で魚を飼ってたんですけど、魚ってストレスですぐに死ぬんですよ。犬も実家に居るんですけど、やっぱりストレスに弱いんですよ。人間って、生物としてこう色々考えたりできますよね。もっと本当はいろんなことを感じていると思うんですよ。自分の家でくつろいでいても、ストレスを感じたりする時もあったり。その自分のストレスを排除して、自分が最もリラックスができる状態っていうのが、いい暮らしだと思いますね。

プロフィール
The fin. Yuto Uchino
3rd Album『Outer Ego』2021年11月24日リリース

Vocal / Synth / Guitar。神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。

https://www.thefin.jp/
https://twitter.com/yuto__the_fin/
https://www.instagram.com/yutouchino/

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