マンションの共用空間「集会室」について①(全2回)
Brillia ist東雲キャナルコートは、平成17年3月より入居がスタートした423戸の賃貸マンションです。都心へのアクセスが良好で、豊洲が生活圏でありながら開放感のある美しい街並みが魅力の東雲。当マンションは高層棟と低層棟で構成され、1LDKから4LDKまでの幅広いプランがあり、シングル〜ファミリー世帯が暮らしています。多くの世代が暮らすマンション内に共用スペースの「コミュニティサロン」があります。115 平米の広さでデスクやチェアの什器が揃っていますが、これまで入居者の皆さんにあまり利用されていなかった場所です。そこでコミュニティサロンのリニューアルを行うために入居者の皆さんへのニーズ調査を行いました。ライフスタイルや働き方の変化、サード・プレイスに対する意識などのニーズを聴き、より豊かなで幸せな暮らしを創るための声を集めました。
ひとりで過ごす、みんなで過ごす。両方を叶えてほしい
自宅(第一の場所)でもオフィス(第二の場所)でもない、居心地の良いサード・プレイス。マンション内にある共用空間はサード・プレイスとも考えられます。そんな場所を利用したいときは、どんなライフシーンなのか。入居者の皆さんの声で、最も多かったのが「ひとりで勉強や読書などで集中したいとき」、次いで「テレワークをしたいとき」でした。いずれも、ひとりで集中したいニーズがありました。コロナ禍でリモートワークが定着する中、生活空間である自宅でどのように仕事をするのか、それぞれに試行錯誤がなされたように感じました。家族がいたり、あるいは本来リラックスする場所である自宅で、仕事や勉強に集中するのは難しさもあります。周囲との適度な距離感をとることや、気が散ってたり、余計なものがない環境は、サード・プレイスで叶えられます。また異なるニーズとして「入居者以外の対象者も招いてパーティーや食事会を行うこと」や「入居者同士の交流会を行うこと」といった声も多くありました。友人たちとの楽しいひととき、人と人のつながりや交流が生まれるサード・プレイスは、コミュニティの信頼関係を育む役割となりそうです。子どもたちの誕生日パーティーや節目のお祝いごとなど、子育ての記憶に残したいニーズもあります。400戸を超える大規模な集合住宅だからこそ入居者コミュニティへの安心感は、とても大切な要素。ひとりで集中したいときも、みんなで集まりたいときも、居心地が良いサード・プレイスが求められているようです。
wifiや電源に加えアートや本もあると嬉しい
次に、空間の機能について深掘りしていきます。サード・プレイスにあると嬉しいアイテムはどんなものか。最も声が多かったのが「wifi」と「電源」でした。リモートワークはもちろんのこと、スマホやタブレット、コードレスヘッドフォンを使って映画鑑賞したり、アプリや動画サービスを使った勉強をスムーズに行うために、「wifi」と「電源」は必須の機能です。オンラインサービスやリモートワークが普及したことで、いつでもどこでも「つながる」ニーズは高いようです。また、外出しなくてもマンション内でちょっと気分転換できたり非日常を味わいたいというニーズも。アートなどおしゃれな空間を演出する要素は通いたくなる空間づくりに需要です。また「本や雑誌」に関する声もありました。自治体が運営する図書館やブックストアは近隣にありますが、マンション内の共有空間に必要という声は「息抜きや気分転換を気軽に行いたいニーズ」だと感じました。カフェやリモートワークスペースは街へ出かければありますが、頻度によっては費用もかさんできます。自宅とは違う場所で「気軽に集中したい・くつろぎたい・リフレッシュしたい」というニーズは、マンション内にあるサード・プレイスだからこそ実現できることなのかもしれません。
タイムゾーンでニーズが多様に変化する
最後に、利用したい曜日や時間帯について聴きました。平日や週末、朝から夜の時間帯 まで、どこかが大きく偏るわけではなく、それぞれのタイムゾーンにニーズがありました。多くの世代が暮らすマンションなので、用途へのニーズも多様になってきます。1人で集中したい仕事や勉強であれば、平日の午前中や夜の時間帯。人が集う交流やイベントであれば週末の日中や夕方の時間帯。また着付けや習いごとなどの貸切のニーズもありました。また座席のレイアウトについて掘り下げて聴くと、ひとり席、グループ席、ソファ席など気分や用途によって使い分けしたいニーズが明らかになりました。またリモートワーク専用のスペースのように用途を一つに限定するのではなくて、入居者の皆さんのニーズを極力叶えていきたい意志も見えてきます。時間帯やレイアウトを工夫することで、多様なニーズを叶えるサード・プレイス。暮らす人々がお互いを尊重するニーズが明確になりました。
暮らす人々の生活を豊かにするサード・プレイスの在り方
集合住宅であるマンションのスケールメリットである共用空間について、今回掘り下げて声を聴きました。サード・プレイスの定義は「自宅でも職場でもない第三の居心地の良い場所」ですが、今回リニューアルする「コミュニティサロン」が、毎日の生活を豊かにする場所となるよう多くのヒントを得られました。ひとりで過ごしたいときも、みんなで集まりたいときにも、「そうだ、あの場所へ行こう」と思ってもらえるような、そんな空間へと生まれ変わっていきます。
次回は、アンケート結果の分析を経て、コミュニティサロンリニューアルの方向性を決めるために、実際に入居者のみなさんにお会いして対話を行った共創プロセスについてお伝えします。
調査データ
Brillia ist東雲キャナルコート 入居者アンケート実施(2022年6月、N値=64)