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「POSTERS × FURNITURES」Designers Interview④with KIGI(全4回)

「POSTERS × FURNITURES」Designers Interview④with KIGI(全4回)

東京建物が主催するアートギャラリー BAG-Brillia Art Gallery-において、ポスターと家具の共演「POSTERS × FURNITURES」の企画展を2024年2-3月に開催しました。bloomoi(ブルーモワ)の共創パートナーであるKIGI(キギ)をディレクターに迎えた本企画展は、18名のデザイナーが手掛けたポスターにそれぞれ家具を組み合わせた展示です。家に飾れるポスターは額装やサイズを選んで購入することが可能で、訪れる人に自分らしい暮らしを考えるきっかけを作っています。企画展のBehind storyとして5名のデザイナーにポスターの制作背景や暮らしに対するお話を伺いました。今回は、KIGIの植原 亮輔さんと渡邉 良重さんのインタビューをお届けします。

これまでのインタビュー
vol.1 葛西 薫
https://bloomoi.brillia.com/reports/entry_0025/
vol.2 髙田 唯
https://bloomoi.brillia.com/reports/entry_0026/
vol.3 菊地 敦己
https://bloomoi.brillia.com/reports/entry_0027/

すべてのクリエイションは要素が一度結合し、やがて拡散していくことの繰り返し

−ポスターを制作した背景について教えてください。

植原さん:

このポスターは2012年に発表したシールシートでできた作品「implosion⇄explosion」をポスター化したもの。出張先の市場で撮影した”漂白剤のボトルが並んでいる写真”を元にしました。放射状の図柄が描かれた丸いピクセルを作成し、図柄の色や面積によって濃度をコントロールしながらグラフィカルに表現したものです。

このシールシートの手法で作品を多数制作していた時期が2012年~2014年でした。「人間が行う様々な行為は、全てクリエイションである」というクリエイションに対する僕の考察を作品にしてみたいと考えたのです。
例えば、料理を作る、日曜大工をする、会議で何かを決める、服を選ぶなど、日々の生活はクリエイションだらけ。それぞれのクリエイションがどういうプロセスで一生を終えるかと考えると「様々な要素が集まって一度カタチになる。そしてそれが多かれ少なかれ広がっていく運命にあること」という発見がありました。

また、<集合→結合→拡散>していく流れを<根→幹→枝葉>といった具合に視覚化してくれているかのような”木の在り方”にも興味が湧きました。土の中には様々な要素が集まって、それらを根が吸い上げて、幹になって、地上に出て、枝が伸び、花が咲き、実を結び、動物や人に摂りこまれ、エネルギーになります。宇宙では塵とガスが集まって丸いカタチを成して、長い間「星」として維持され、やがて爆発し、塵やガスになり、また宇宙を漂う。クリエイションというものはこういった自然現象にも似た性格を持ち、似たような運命を辿るものであることをイメージしながらこのシリーズを作っていました。

手法としてシールを使っているのは自分にとって身近な存在だったからです。シールシートも同じで、シートでひとつの集合体だったものが、ひとつひとつシールを剥がして、手帳やノート等に貼って何処かへ散らばっていき、社会に溶け込んでいきますよね。

漂白剤のボトル(ブリーチ)を被写体にしたのですが、漂白するということは、印刷された布や汚れた布を素の状態へ戻していく作用があることをイメージし、シールシート上のシールがなくなっていくこととどこか繋がりを感じて作品のビジュアルに選んだのだと思います。

―暮らしで大切にしていることはありますか。

植原さん:

家具をオーダーで作ることも多いです。素材は鉄だったり、木だったり、コンビネーションだったり。その他は中古家具をメンテナンスしながら、綺麗に復活させる家具屋さんも好きですね。結局、オリジナリティがないと所有欲が湧かないんです。現代的なものやアンティークを混ぜながら、スタイルは気にしないで、自分の好きなものを家に置いていますね。

ジュエリーと絵で、詩の世界を表現

−ポスターを制作した背景について教えてください。

渡邉さん:

2015年に開催した企画展「dropス」から生まれたポスターです。ジュエリーアーティストの薗部悦子さんと一緒に展覧会をすることになって、何をしようかな、と考えていたときに、私の本棚に『寺山修司少女詩集』を見つけました。昔、この詩集が好きで読んでいたことをすっかり忘れていたけれど、久しぶりに開いてみると、詩のタイトルや文中にも宝石の名前がたくさん出てきて、呼ばれたような気がして、この詩をテーマに展覧会をしたいと思いました。薗部悦子さんにもお伺いしたら「私も興味がある」とのお返事で、一緒に寺山修司さんの詩をいくつか選びました。

そこから真珠やダイヤモンドなどの詩に合わせて、絵を私が描いて、薗部悦子さんはジュエリーを制作して。お互いがどんなものを作っているか分からないまま、企画展の会場で合わせるという展示でした。ポスターはガーネットの詩で描いた絵です。透明水彩とアクリル絵の具で描いたもので、企画展のときは絵を写真で撮影して印画紙で展示しました。時間が経っても昔から好きなものは、やっぱり好きなんだなと改めて思いましたね。

暮らしはコンパクトにモノは増やしすぎない、好きなものに囲まれる暮らし

―暮らしで大切にしていることはありますか。

渡邉さん:

数年前に、「最小限の時間で片付けができる部屋」をモットーに住まいをリニューアルしました。(笑) 例えば、毎日必ず使うドライヤーのコードの収まりや取り出しやすさを考えた設計というような。部屋は広くはないけれど、欲しい家具はどんどん増えて際限がないから、それも良かったのかな〜などと肯定的にとらえてもいます。小さな置物はたくさん持っている方かな。詰め込んで混雑しているけれど、いつでも見えるようにガラスケースの中に入れています。

我が家のテーブルの天板は透明なサーモンピンク色で、空間の一番のポイントになっています。また自分でデザインしたカーテンやラグなどを使っています。実際に購入してくれた方がどんな気持ちで使っているのかを想像したくて、自分の部屋にも置くことにしました。

キギ
KIGI

植原亮輔と渡邉良重により2012年に設立。企業やブランドのアートディレクションのほか、プロダクトブランド「KIKOF」、ほぼ日とのファッションブランド「CACUMA」などのデザインコンテンツを手掛ける。東京・池尻でギャラリー&ショップ「OFS.TOKYO」を運営するなど、ジャンルに拘らず自在な発想と表現力でクリエイションの新しいあり方を探し、活動している。2022年にアイウェア「TWO FACE」を含む新たなプロダクトレーベル「ASSEMBLEDISASSEMBLE」をスタート。代官山ヒルサイドフォーラム「all is graphics」展(2022)、宇都宮美術館「KIGI WORK&FREE」展(2017)、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレに「スタンディング酒 BAR・酔独楽」出品(2018)。東京ADC会員賞(2023,2019,2017)、東京ADCグランプリ(2015)、亀倉雄策賞(11th植原,19th渡邉)等受賞。
植原亮輔/ 展示のポスター作品名:「implosion⇄explosion」*Postersで購入できる同作品は、シールではなくUVインクジェットプリントによる作品です。
渡邉良重/ 展示のポスター作品名:drop's garnet

Posters
https://posters-ofs.jp/